「Nのために」(はてな年間100冊読書クラブ 8/100)

Nのために

Nのために

  • 「告白」と同じ、モノローグから真相が明らかになる展開

「告白」に魅せられて以降、著者の
湊かなえさんの著書を読むようになりました。
この「Nのために」も、「告白」と同じように、
「多数の人物によるモノローグ形式」によって
殺人事件の真相が、明らかになっていく展開ですね。
まぁ、著者の著作に慣れてきたこともあって、
「告白」の第一章を読み終えた後のような、
衝撃的な印象は受けませんでしたけど‥(^^;)
登場人物がそれぞれ、愛情や共感を抱いた「Nのために」
(N、は各人によって異なる)行動した結果として
複雑な真実が成り立っている、という感じですね。

  • トラウマをもった登場人物による行動で、想定外の方向へ‥

形式は、「告白」と同じですけど、テーマ的には、
著者の前作「贖罪」と対をなしている感がありますね。
「贖罪」は、「物語の発端の殺人事件が、
登場人物のトラウマになった」、という流れでしたが、
「Nのために」は、「既にトラウマを抱えた登場人物達が
殺人事件に(間接的に)関与していく」、という展開でしたね。
トラウマは、他人には想定しづらい内容のため、
トラウマを抱えた登場人物の行動が重なることにより、
事件の真相は、誰もが想定外の方向に進んでいく、
という展開でしたね。トラウマを扱っているということもあり、
内容的には、重苦しくなってしまう感もありますね。
トラウマの原因として、夫婦間のDV、親による子供の虐待、
屈折した感情を持つ母親などが、登場しますね。

  • 行動を起こすもハッピーエンドにはならない、後味の悪さも‥

トラウマを持つ登場人物達が、幸せをつかもうとして
「Nのために」行動を起こします。しかし、
「その行動の結果は、必ずしもハッピーエンドにはならない」
という点が、湊かなえ作品の真骨頂、といった感じでしょうか(笑)
登場人物達の、「大切なNのため」の思いや行動は、
肝心の「N」にはことごとく伝わっていなかったりするので、
他の湊かなえ作品と同じく、読後に後味の悪さは残ります‥(^^;)
思いが相手に伝わらずすれ違ってしまう一例として、
シャープペンシルの4回のノック「たすけて」は
相手には伝わらず、一方で5回のノック「ありがとう」は
相手は「しんじまえ」と受け止めていたりとか‥(笑)
しかし、私のような、登場人物と同じように
歪んだ感情を持っていると自覚している身にとっては(笑)
湊かなえ作品は、麻薬のような心地良さが
感じられてしまったりするのも、また事実なのですよね‥(^^;)
でも、「歪んだ感情を持っている登場人物は
結局幸せをつかむことは出来ない」という展開は、
物語とはいえ、歪んだ私の心には
ズキッと突き刺さるものがありますね‥(^^;)
その刺激を求めて、再び湊かなえ作品を読む私‥
登場人物のNの一人、西崎と変わらないような気もします(苦笑)