「介護にいくらかかるのか? いざという時、知っておきたい介護保険の知恵」(はてな年間100冊読書クラブ 95/100)

  • 医療とFP、両方の知識を持った著者の存在は、心強いですね

本書は、医師であり、ファイナンシャル・プランナーの資格を
持っている著者による、介護を病状面だけからではなく
金銭面からの分析を加えた本ですね。
普通の医師は、金銭面の知識に乏しく、
またFPは、病状面の知識に乏しいことが多いです。
そのため、共に患者やその家族にとって
ベストのアドバイスが出来ないことが多いです。
しかし現状では、介護にはお金の問題がついて回ります。
病状と金銭面、両方把握している著者のような人が増えれば、
金銭面で介護が楽になるケースが、多くなりそうですね。
本書には、金銭面(社会保障)知識に乏しかったため、
「自宅を競売にかけてアパートに移った」事例がありましたが、
この場合、社会保障制度を知っていれば、
自宅を手放す必要は、無かったとのことです。
「介護は、精神的にも金銭的にも大変」ではありますけど、
この本を読んで、金銭的な面では
少しは希望が見えてきた感じもしますね。

  • 日本の社会保障制度は「申請主義」、知らないと恩恵が受けられない

この本で一番印象に残ったこととしては、
日本の介護保険制度など、社会保障制度は
世間一般で言われているよりは充実しています。
しかし、「申請主義」であり、「制度の存在を知って
自ら行動しないと、恩恵が受けられない」ということですね。
公務員は「特定の人にだけ教えることは、平等に反する」
という理念があり、窓口で「あなたはこの制度が利用できる」
というようにアドバイスをしてはくれない、とのことです。
なるほど、いかにも公務員らしい硬直した考え方というか、
民間のサービス精神とは、かけ離れていますな(笑)

  • 制度をよく知り、利用出来るものは利用する‥

国がこのような姿勢である以上、
我々国民としては、現在のところは、
「制度をよく知って、利用できるものは利用する」
という姿勢で臨むしか、ないですな。
知らないままでは、本書に挙げられている事例のように
本来ならば受けられる筈のサービスも
受けられなくなってしまいます。
日本人は、「自ら動く」ことが得意でない人が多そうです。
こうした日本人の特性に合わせて、
「本来は支給対象者になる筈の人にも、
(申請が無ければ)支給する必要は無い」システムとして、
「政府側に出来るだけ負担が少なくなるような」
社会保障制度になっているのかもしれません(笑)
やっぱ、官僚は優秀ですよね‥(笑)