「十字軍物語 1」(はてな年間100冊読書クラブ 87/100)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: 単行本
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- 歴史物として面白く、人物描写も見事
「ローマ人の物語」シリーズが著名の、
著者・塩野七生さんによる、新シリーズですね。
中世、何度か繰り返された十字軍の歴史をたどっていきます。
本書は、最終的にはエルサレム奪取という目的を果たした
第一次十字軍について、触れていますね。
「ローマ人の物語」シリーズと同様、
歴史モノの読み物として面白く、
また人物もしっかりと描かれています。
本書で活躍した、第一次十字軍の登場人物は、
本書の最後では、全員舞台を去ることになります。
それが寂しく感じてしまうほど、
登場人物に思い入れが出来てしまったりします‥(笑)
- 「カノッサの屈辱」から十字軍の派遣へ
受験では日本史をメインとしたため、
世界史はあまり詳しくは知らないのですが
そんなこともあって、十字軍発足の背景とか、
今回初めて知ることも多く、面白かったです。
第一次十字軍が実施された頃は、
少し前に、「カノッサの屈辱」があり、
ローマ教皇の権威が強くなっていたそうです。
(そういう背景もあったからこそ、
各諸侯が教皇の呼びかけに応じて、十字軍に参加した。)
また、ローマ教皇(当時はウルバン2世)は、
「カノッサ」当事者の、神聖ローマ帝国皇帝
ハインリヒ7世との抗争が続いており、
「十字軍」の提唱は、教皇の権威を高める狙いもあった、
とのことですね。こういった歴史の背景を知ると、
より面白みが感じられると思います。
- 中世ヨーロッパでも、次男三男は家を継げず
また、参加した諸侯は、
家を継がずに(継げずに)気力・体力をもてあましていた
各家の次男や三男が多かったそうですね。
日本でも昔、家を継がない次男や三男は、
田舎から都会に出て、
サラリーマンなどの職に就いたりしました。
それと同じような事象が、
中世ヨーロッパでもあった、ということですよね(笑)
いずこも同じなのだなぁ‥という感じです。
- ビザンチン帝国の協力も得られないなか、進軍
さて、教皇の元に集結して
エルサレム目指して旅立つ「第一次十字軍」ですが、
時には内部の権力争いから対立もし、
時には一致団結して、進軍していきますね。
西欧からエルサレムへの道中にある、
同じキリスト教国のビザンチン帝国からは、
支援を受けられるどころか、
実質的には妨害されてしまいます。
(=エルサレムへの道中である、
小アジア(現在のトルコ)は、
ビザンチン帝国の旧領であるため、
ビザンチン帝国も旧領回復を意図していた。)
- 敵地での戦いの中、半ば奇跡的にエルサレムの奪取に成功
そして、小アジアは当時はイスラム領のため、
敵を撃破しないと、先に進めません。
敵地での戦いの上、ビザンチン帝国の協力が得られず
補給にも苦しむ状況からは、
常識的に考えて、成功は想像し辛いです。
しかし、迎え撃つイスラム側の仲間割れや仲違いもあり、
半ば奇跡的に(笑)エルサレムの奪取に成功する、
という感じの経緯ですね。
エルサレム攻略を果たした戦巧者のゴドフロア、
ゴドフロアの後を継いでエルサレム王に就いたボードワン、
エルサレムには進軍せず、占領地のシリアに留まって
後方の安全を確保したボエモンドと
その甥で血気に流行る若大将・タンクレディなど、
彼等の活躍ぶりがしっかりと描かれていますね。
上述のように、魅力的な彼等は
本書の最後には全員舞台を去ることになります。
名残惜しいと同時に、一区切りにふさわしい状況、という感じですな。