「月曜美術館 休館日に、そこで何が起こっているのか」(はてな年間100冊読書クラブ 84/100)

月曜美術館 休館日に、そこで何が起こっているのか

月曜美術館 休館日に、そこで何が起こっているのか

  • 子供達に「美術鑑賞教育」が必要、との著者の思いから始まった試み

ゴッホの「ひまわり」を所蔵していることで有名な、
損保ジャパン東郷青児美術館」館長に就任した著者が、
来館者の減少傾向等から、「日本では、美術鑑賞教育がなされていない」
というところに思い至ります。そして、子供達に対して
「美術鑑賞教育」を実施していきたい、という思いを抱きます。
そして、地元の新宿区内の学校等と協力しながら、
「鑑賞教育」を実施していく過程を綴った本ですね。
「鑑賞教育」は、休館日の月曜日を利用して実施されます。
子供たちの相手を勤めるのは、その日はお休みの美術館員ではなく、
一般から募集されたボランティアです。
ボランティアの指導の元で、本物を見た子供たちが、
感想を皆で語り合う「対話式美術鑑賞」ですね。
子供たちにとって、かけがえのない体験になっていることが、
発言からもよく理解できる、という感じです。

  • 区の協力を仰ぎ、ボランティアを募集し‥実現には長い道のりが

もっとも、その道のりは楽ではなく、
小学校(の先生)に話を持ち込むと、
「美術館への移動が危険」、「大勢の生徒の移動費用が無い」、
「図工の先生の人事異動が多い」といった、
様々な問題点が生じてきます。費用面では区の協力を仰ぎ
(新宿区は、区営の美術館を持たず、
区長も文化振興に理解のある人であったため、
協力が得やすかったそうですね。)、
また、美術館員の負担増という面は
市民ボランティアを募集することによって、対応しますね。
そして、今では新宿区立の小中学校の全校で
実施されるまでに至ったそうです。

  • 個人的な期待とは、少し違っていましたけど‥

最後は余談ではありますが、
私が最初に、この本のタイトルを見たときには、
「入館客のいない休館日の月曜日に、
美術館内ではどんなことが行われているのか?」
(例えば、展示替えとか、展示品の保護対策とか)
といった内容を期待していました。その点からは、
本書の内容は少しズレていたかな、という感じですね‥(^^;)
もっとも、学校教育では実施されていなかった
「美術鑑賞教育」を小中学生に展開して、
「美術(館)に親しみを持って貰おう」
という著者の試みは、素晴らしいことだと思います。
また、私も子供の頃にこの教育を
受けてみたかったですね。
美術鑑賞に対する心持ちというものが、
きっと変わったのではないかな、と思います。