「先送りできない日本 「第二の焼け跡」からの再出発」(はてな年間100冊読書クラブ 80/100)

  • 震災に関する記述は、肩透かしかな‥

解りやすいニュース解説で、
一躍時の人になった、池上彰さんの著書ですね。
著者が池上さんであること、及びこの本の標題からは、
東日本大震災や、福島第一原発に関する
解りやすいニュース解説」が
本書のメインになっているものと、想定されそうです。
しかし、実際のところは
出版時期にもよるのかと思いますが、
震災に関しては、「タイトルに反映させ、
本文でちょこっと触れてみただけ」という感じですね。
書店の平台で特設される「震災本コーナー」に
ラインナップさせて、便乗的に売上を伸ばそうとする感が
正直なところ否めないですね。
本書で触れられている「現在の日本の課題」については、
震災で強まったとはいえ、もともと「先送りできない」
状況にあったのは、変わりはないですから。

  • 池上さん自身の提言、というのは珍しいのでは‥?

また、この本は、池上さんの十八番である
「解りやすいニュース解説」ではなく、
池上さんご自身の、提言の主張がメインになっていますね。
このあたりは、「解りやすい解説」がモットーの
普段の池上さんのテレビや著書とは
少し趣が異なっているかな、という感じがします。
世界各地のニュースに触れ続けている池上さん、
次第に、現在の日本に対する憂国の情が増して
本書の発刊に繋がったのでしょうか。

  • 池上さんが「提言」せざるを得ないほど、日本は「待った無し」の状況に‥

主な内容については、「TPPと日本の農業」
一党独裁の大国・中国との付き合い方」
などがありますね。TPPについては、
「貿易立国である日本は、
自由貿易を押し進めTPPに参加するべき。
農業は、海外諸国との競争に耐え得る
大規模農家を育成するべき」と、明確に主張していますね。
その他、「消費税は増税するべき」といった、
耳の痛い提言も、盛り込まれています。
「池上さんの提言」というのは、目新しい感じがします。
しかし、「解りやすく解説して、考えさせる」
ことがモットーの池上さんが、
あえて耳の痛い提言をするところに、
現在の日本が「先送りできない」待った無しの
危機的な状況におかれている、ということを
改めて認識した思いです。