「排除の空気に唾を吐け」(はてな年間100冊読書クラブ 51/100)

排除の空気に唾を吐け (講談社現代新書)

排除の空気に唾を吐け (講談社現代新書)

  • 弱者に共感的な著者の文章は、好みが分かれるかも‥

自らの経験を基に、「社会の弱者」に視点をあてた活動を
展開している著者が、「弱者の排除」を柱として、
派遣社員や母子家庭などの状況を語った本ですね。
劣悪な労働条件の上に都合よく首を切られる派遣社員
仕事を掛け持ちしても生計が苦しい母子家庭の貧困状況など、
その内容は概ね一般的なものではありますが、
弱者の立場に立った著者の、怒りの声が伝わってきますね。
感情的な文章は、読み辛さも感じさせますが、
取り上げられている弱者と同世代の私にとっては、
割と共感を持って読むことが出来ました。
私自身が就職難に直面したこともあり、
従業員・派遣社員を使い捨てにして高収益を記録した
企業への批判は、共感できるものがありますね。
ただ、「貧困に陥った弱者は、
自殺や犯罪に走る傾向がある」としていますけど、
そんな著者と同世代の無差別殺人犯(死刑囚)を、
同情的に見ていることについては、
「排除された弱者」とはいえ、少々どうかな、
と思ったりもしてしまいますが‥

「弱者の排除」という点については、
日本では、「労働者を使い捨てる企業」と共に、
弱者を救済する「セーフティネット」が無い
(機能していない)ことも問題だとしていますね。
生活保護の支給拒否など、公共福祉が不十分だったり、
派遣社員は企業福祉から漏れてしまったり、
学歴が無い人は就職への機会が
閉ざされてしまったりしています。
また、学歴など「一旦転落してしまうと、
二度と再挑戦するチャンスが無い」というのは、
セーフティネットが機能していないことと共に、
日本の社会の問題点でもありますね。

  • 戦地で貧困層が危機に晒されて‥

上記のような、社会的弱者についての内容は
個人的には特別目新しい内容も無かったのですが、
この本の中で、一番興味深かったのは、
「弱者=貧乏人が戦争に狩り出されている」として、
戦争下のイラクで料理人として働いた人を
取り上げている内容ですね。
戦地へ赴くことは誰でも嫌ですから、
貧困国の外国人を傭兵として雇うケースがあることは
知っていましたけど、料理人のような
後方支援の「部隊」も、高級を餌にして
貧困層を雇い入れたりしているのですね。
この場合、本人は「出稼ぎ労働の料理人」という心積もりでも、
反対勢力から見れば「軍隊の一員」となります。
当然、容赦なく攻撃対象になり得ますよね。
応募する貧困層にそこまでの自覚があるかとなると、
きっと微妙ですよね‥