「排除の空気に唾を吐け」(はてな年間100冊読書クラブ 51/100)
- 作者: 雨宮処凛
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: 新書
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- 弱者に共感的な著者の文章は、好みが分かれるかも‥
自らの経験を基に、「社会の弱者」に視点をあてた活動を
展開している著者が、「弱者の排除」を柱として、
派遣社員や母子家庭などの状況を語った本ですね。
劣悪な労働条件の上に都合よく首を切られる派遣社員、
仕事を掛け持ちしても生計が苦しい母子家庭の貧困状況など、
その内容は概ね一般的なものではありますが、
弱者の立場に立った著者の、怒りの声が伝わってきますね。
感情的な文章は、読み辛さも感じさせますが、
取り上げられている弱者と同世代の私にとっては、
割と共感を持って読むことが出来ました。
私自身が就職難に直面したこともあり、
従業員・派遣社員を使い捨てにして高収益を記録した
企業への批判は、共感できるものがありますね。
ただ、「貧困に陥った弱者は、
自殺や犯罪に走る傾向がある」としていますけど、
そんな著者と同世代の無差別殺人犯(死刑囚)を、
同情的に見ていることについては、
「排除された弱者」とはいえ、少々どうかな、
と思ったりもしてしまいますが‥
- セーフティネットが機能しない日本社会
「弱者の排除」という点については、
日本では、「労働者を使い捨てる企業」と共に、
弱者を救済する「セーフティネット」が無い
(機能していない)ことも問題だとしていますね。
生活保護の支給拒否など、公共福祉が不十分だったり、
派遣社員は企業福祉から漏れてしまったり、
学歴が無い人は就職への機会が
閉ざされてしまったりしています。
また、学歴など「一旦転落してしまうと、
二度と再挑戦するチャンスが無い」というのは、
セーフティネットが機能していないことと共に、
日本の社会の問題点でもありますね。
- 戦地で貧困層が危機に晒されて‥
上記のような、社会的弱者についての内容は
個人的には特別目新しい内容も無かったのですが、
この本の中で、一番興味深かったのは、
「弱者=貧乏人が戦争に狩り出されている」として、
戦争下のイラクで料理人として働いた人を
取り上げている内容ですね。
戦地へ赴くことは誰でも嫌ですから、
貧困国の外国人を傭兵として雇うケースがあることは
知っていましたけど、料理人のような
後方支援の「部隊」も、高級を餌にして
貧困層を雇い入れたりしているのですね。
この場合、本人は「出稼ぎ労働の料理人」という心積もりでも、
反対勢力から見れば「軍隊の一員」となります。
当然、容赦なく攻撃対象になり得ますよね。
応募する貧困層にそこまでの自覚があるかとなると、
きっと微妙ですよね‥