「バッテリー」(はてな年間100冊読書クラブ 64/100)

バッテリー (角川文庫)

バッテリー (角川文庫)

  • これは本当に児童小説?大人でも充分楽しめますね

この小説、映画化されたりもしており、
話題になっていたのは知っていました。
しかし、「話題になったとはいえ、元々は子供向けの本だから
大したインパクトは無いだろう」と思っていました。
今回始めて手にとってみたのですが、
読み始めてみるとなかなか面白かったですね。
登場人物の心理面が深く掘り下げられており、
「これは本当に子供向けの小説なのか?」と
思ってしまいました。また、著者は女性なのですが、
男性向けのスポーツである野球を
題材にしたこれだけの小説を、女性がよく書けたものだな、
と正直感心してしまいました‥(^^;)

  • ジコチューの主人公と、反発を覚えながらも才能を認める周りの友達

物語は、主人公の小学生(もうすぐ中学生)原田巧が、
家庭の都合で田舎に転校してくるところから始まります。
この主人公、天才ピッチャーという位置づけになっています。
しかしそれ故に野球バカ&孤高の存在であり、
とんでもないジコチューなんですよね(笑)
引越し後の田舎町で主人公と出会った、
キャッチャーの永倉豪は、そんな主人公に反発を覚えつつも、
才能を認め、一緒に大舞台に立ちたいという思いを抱きます。
また、ジコチュー原田も、野球に対しては真摯であるため
永倉の才能を認め、ここに名バッテリーが誕生して‥
という感じの展開ですね。はじまりの第1巻では、
小学校から中学へ進学する時期が舞台です。
溢れる才能を元に、野球一辺倒の原田に対して、
「普通の子」である永倉やその友達は、
母親から「野球をやめて塾に行け」等と言われて、
葛藤する様子が描かれていますね。

  • 人間がしっかりと描かれており、ただのスポ根モノとは違います

いわゆるスポ根モノとは違い、
主人公や周りの友達、主人公を囲む大人たちの
心理的な繋がりの面が多く描かれて、
それだけ深い内容に仕上がっていますね。
早熟の天才で「野球が全ての中心」
大人びた性格の主人公、主人公の父親は
そんな主人公のことがあまり理解できず、
主人公を苛立たせてしまいます。
主人公の母親は、手のかかる主人公の弟・青波の
世話に追われて、主人公に対しては放任気味ですが、
実は主人公の難儀な性格を見抜いて、心配している‥
‥といった感じですね。主人公やその友人の
野球仲間だけではなく、家族等の周りの人達も
しっかりと描かれており、読み応えを感じますね。
なんだか久しぶりに、続巻が早く読みたくなった
小説に出会ったなぁ、という感を受けました。