「遣唐使」(はてな年間100冊読書クラブ 17/100)

遣唐使 (岩波新書)

遣唐使 (岩波新書)

日本史ではおなじみ「遣唐使」ですが、
本書はその遣唐使について、
岩波新書らしく、出来るだけ事実や根拠に基づき
手堅くまとめられている本って感じですね。
その中で、本書に取り上げられている、
留学生井真成についての箇所は、
昨年(もう一昨年になりますか)、大阪の藤井寺
その井真成関連する展示を見たこともあり、
興味深く読めたりしました。
遣唐使だけではなく、その前の遣隋使についても
取り上げられています。有名な聖徳太子発案の
「日出ずるの天子」で始まる国書が
不興を買った、という記述もありますね。

  • 日本側は、譲れないところは決して引かずに‥

ここから始まる、「朝貢を受ける=日本を臣従させたい」
中国側と、貢物は差し上げるものの、臣従は避けたい
日本側とのやりとりなども、なかなか興味深かったですね。
唐の全盛期が始まる頃に、日本は白村江の戦で
唐に敗れて朝鮮半島の拠点を失っています。
強大な敵国相手の外交交渉となる訳ですが、
唐の言うことを全て丸呑みする訳ではなく、
「(日本にとって)譲れないようなところは、
一歩も引かなかった」その精神は立派だな、と思いました。
今の日本の外交よりも、よほど上手だと
いう感じがしてしまいますよね‥(^^;)

  • 道教」についても、日本側は拒絶反応を‥

外交だけではなく、唐側は、日本側が求めていた
「仏教」の他に「道教」も持ち帰らせようとしていたこと、
そして日本側はその点に関しても一歩も譲らず、
道教については「フィルターで濾す対象として」
日本には持ち込ませなかった、なんて記載もあります。
当時の日本人、随分としたたかでしたよね‥(^^;)
唐が日本に道教を押し付けようとしたこと、
そして日本がそれを事実上拒否していたこと、
これらの事実は私にとっては初耳でした。

  • ただ、仏教や漢字などは、日本文化の原点に

また、はるか千年以上の昔の出来事、ということで
行き帰りの遭難の恐怖も関わらず、
唐の国を目指した人たちは、
やっぱ進取の精神に溢れていたのでしょうか‥?
まぁ、行きたくないのに命令で強制参加
させられた人もいるでしょうけど‥(^^;)
その進取の精神に溢れていた人達の一部である
最澄空海、そして遂に日本に戻ることが出来なかった
阿倍仲麻呂のような有名人も描かれています。
もちろん、逆に唐からからはるばる日本に来た
鑑真も取り上げられていますね。
当時の日本人が、中国から仏教(文化)を
摂取することに注力していた様子が窺えますね。
それらの文物が、日本文化の礎になっていたとしています。