「淋しきカリスマ堤義明」(はてな年間100冊読書クラブ 70/50)

淋しきカリスマ堤義明

淋しきカリスマ堤義明

西武鉄道有価証券報告書の虚偽記載により
同社は上場廃止となり、そして西武グループ総帥の堤義明氏は、
責任を取ってグループの役職から退きました。
この本は、その堤氏・そして堤一族に焦点を当てた本ですね。
堤一族がメインの内容になっているため、
今回の虚偽記載事件の真相に迫っている訳ではなく、
時期的にその点に注意が必要カナって感じがします。

カリスマ性といえば、題名の義明氏よりも、
その父で西武グループの創業者・堤康次郎氏のほうが
はるかに強いって感じがしましたね。
武蔵野鉄道(現・西武鉄道)の沿線や軽井沢などで
土地を安価で強引に買い占めて地元住民の怨嗟の的になったり、
刑務所の中には入らないけど、その前までは行く」と公言するなど、
非合法スレスレのこともしていたみたいですね‥(^^;)
その一方で政治的にも衆議院議長まで上り詰めるという、
非常にエネルギッシュな人だったようです。
しかし欠点として、女癖は非常に悪かったみたいですね‥(^^;)
あちこちに妾をかこったりして、
例えば子息の義明氏と、その兄にあたる
セゾングループ元代表堤清二氏は異母兄弟なのは有名ですが、
はたまた清二氏の兄の嫁にも手を出そうとしていて、
親子断絶状態にもなったようですね‥(^^;)
いわゆる一夫多妻のような、江戸時代的な気質を
残していた人だったのかな、という感じです。
そんな康次郎氏は、実業家としての腕は凄いですけど、
人間的にはあまり尊敬できないというか、
お近づきにはなりたくない人って感じがしますね。

  • 義明氏の「カリスマ」ぶりとは‥

序盤に記載されていた上記の康次郎氏の印象が強くて、
逆に義明氏のカリスマ性はあまり感じなかったですね。
康次郎氏の遺言が、武田信玄のそれと同じような感じで、
「自分が死んでからは十年間は動くな」という内容だったようですが、
義明氏はこの遺言をしっかりと守っているんですよね‥(^^;)
まぁ、康次郎氏はしつけやビジネス面では非常に厳しく、
子供が反抗するのは許さない、
という昔ながらの頑固親父タイプだったようです。
しかし、「そんな父親から解放されて、自由になりたい」
と思うかと思いきや、遺言をしっかりと守るということは、
「カリスマ」というよりは「実直」というか、
死んでも父親には逆らえない、没個性的な印象を受けてしまいますね。
もっともセゾングループを急拡大させ、そして破綻させてしまった
清二氏とは違い、父の残したグループをしっかりと経営し、
父が果たせなかった「プロ野球球団の買収(西武ライオンズ)」や
「アマチュアスポーツの頂点に立つ(JOC会長就任)」など、
「父越え」をした功績もあるようです。

堤一族(特に康次郎氏)の人物の解説も面白かったですけど、
一番興味深かった点は、「税金を払っていない」と言われている
西武グループの節税の方法でしたね。
「税金を払っていないから、堤義明氏は世界一の金持ちに
ノミネートされた」といった噂も聞いた事がありますから。
例えば、
西武鉄道証券取引所に上場され、
経営は(ある程度)オープンにする必要がありますが、
「その西武鉄道の親会社のコクドは非上場とし、
コクドの株式を堤家が持つ」ことによって、
グループを支配し、また情報も出来るだけ内密に。
といったグループ戦略や、そして
②コクドが税金を払わないようにするための施策
→借入金で固定資産(土地など)を増やす。
借入金の支払利息は子会社からの受取配当金の範囲として、
結果コクド本体は利益が出ない。(しかし固定資産は増える)
という、「税金を払わずに、他人の金で資産は増やす」。
ここはなるほど、頭のいい方法を考え付いたものだな、
と実感しました。もっとも、西武グループ
税務署OBなどを雇い入れているため、
税制改正の動向等は西武グループに漏れている
可能性もあるそうですが‥