「ケースブック国際経営」 吉原英樹

・板垣博・諸上茂登編 有斐閣ブックス(はてな年間100冊読書クラブ 8/50)

ケースブック 国際経営 (有斐閣ブックス)

ケースブック 国際経営 (有斐閣ブックス)

有斐閣というと、法律関係のお堅い本が有名って感じですが、
この本は、日本を代表する多国籍企業
国際経営の事例を取り上げた本って感じですね。
2003年3月の発行なので、
今となってはちょっと古いところもあるかなって感じですが。

  • SCEの成功事例

面白かったのは、馴染みのあるSCE
ソニー・コンピュータ・エンタテインメント)でしょうか、
すんなり頭に入りました(笑)まぁ、ゲーム分野で先行していた
任天堂のビジネスモデルの欠点
(ゲームソフトがROMカセットベースなので高い、など)
を洗いだし、それを解決するようなビジネスモデルを作り上げた、
のが成功の原因、という感じで、
まぁあまり国際経営って感じはしませんでしたね(^^;)
国際経営を感じさせたのは、エンターテイメントの
本場のアメリカに開発要員を置く、というレベルでした。

あと、ソニー本体では、ソニーアメリカの社長と故・盛田昭夫氏との
意気投合→社長起用→意見対立から辞任、
という流れも興味深かったです。
「株主&利益第一のアメリカ的経営」を目指す経営者は、
利益の出ない「将来に向けての種まき」的投資を嫌い、
「メーカーとしては今利益が少なくなっても、
投資する必要がある」という盛田氏と対立してしまったようです。
アメリカ的経営の場合、どんな理由であれ、利益を出さないと、
「本人の次のヘッドハンティングの価値が落ちる」そうですね。
このあたりは、会社に一生の忠誠を尽くす
日本的経営とは違うなって感じです。
(日本的な経営観からは、「日本本社の指示により、将来に向けて
投資を行ったため、利益が少なくなった」というのは、
企業内ではなんらマイナスには働かない筈ですから。)

あとは、トヨタ自動車アメリカ進出、
(当時は貿易摩擦の解消の意図があったため、色々気を使った)
ユニクロの中国工場の運営(「安かろう悪かろう」ではなく、
「安いけど品質の良いもの」を作るためにはどうすれば良いか、
という点で、日本から技術者を送り込み、現地人を養成して‥)
といった事例が出ていました。結構読み応えはありましたね。